ウグイス初鳴き。お昼を済ませて好きな美術館のひとつ、大阪市立東洋陶磁美術館へ向かう。お目当は、台北國立故宮博物院所蔵の北宋汝窯青磁水仙盆。昨年12月10日から始まり今月26日まで開催中の展覧会。何度か近くまで行く用事があったのに、うまく時間を作ることができず、よりによって三連休のど真ん中に。これまで並んだことなどなかったけれど、今回はチケット購入に列ができ、入場まで約30分程度かかるとのこと。NHKの日曜美術館で放送されてから関東からもお人がいらっしゃっているとか。とにもかくにも少し並んで無事に拝見することができた。入場制限をしてくださっているお陰で陳列されているお部屋はそれほどの混み具合でもなくじっくり鑑賞。展示されているのは汝窯青磁水仙盆5点(その内4点が故宮博物院所蔵、もう1点が東洋陶磁美術館所蔵)に清朝の皇帝が作らせた倣汝窯青磁水仙盆一点(故宮博物院所蔵)の合計6点。以下覚え書き。
北総の徽宗(きそう)皇帝が造らせた「汝窯」(じょよう)の青磁。北宋の滅亡と共に僅か30年で姿を消した。「天青色」と呼ばれる独特の色合いと肌合いを持つ。現在、この汝窯で焼かれた青磁は世界に90点ほどしか現存しないそうだ。確かに他のどの青磁とも違う透明感のある美しい色。会場には後の時代、18世紀に清朝の皇帝によって、汝窯の水仙盆を再現しようと景徳鎮官窯で焼かれた作品も展示されていたが、オリジナルと比べると別物と言わざるを得ない。
さて、名前。なぜ「水仙盆」? 検索してみると「水仙のような球根植物を水栽培するための盤」という説明が。しかし朝日新聞デジタルの関連記事には以下のような説明があった。
〈汝窯〉 中国・北宋(960~1127年)末期、河南省にあって宮廷用の青磁を焼いた窯。釉薬(ゆうやく)に希少なメノウの粉を混ぜた。生産期間はわずか約20年。汝窯に特徴的な淡い青色を出すのは温度調節が難しく、その後の南宋時代にはすでに「近ごろ最も得がたし」と言われるほど珍重された。1980年代後半から発掘調査が進み、2000年に窯跡が特定された。
汝窯青磁の名品が多い水仙盆(すいせんぼん)は、清朝の全盛期を築いた乾隆帝(けんりゅうてい、在位1735~95年)が好み、乾隆帝の詩などから「子犬のえさ入れ」「猫のえさ入れ」とも呼ばれた。(以上太字は朝日新聞デジタル2016年12月6日より引用)
乾隆帝はとりわけ好んで賞翫した水仙盆の裏には自ら詠んだ詩を刻ませている。さすがは皇帝。やることが大胆です(笑)で、上の引用した記事にある「乾隆帝の詩」はその裏に刻ませた詩(御製詩)のことだと思いますが、それによると当時(乾隆帝時代)水仙盆には「狗食盆(子犬の餌入れ)」や「猫食盆(猫の餌入れ)」などの俗称があったことが分かるとのこと。しかし北宋時代における本来の用途はなお不明、と展示解説に。だいたい「水仙盆」という名称はいつからのものなのかしら?どなたかエキスパートにお尋ねしてみたいものです。さて、さらに乾隆帝は「青磁無文水仙盆」ともうひとつ覆輪のある「青磁水仙盆」には紫檀製に描金(蒔絵)が施された豪華な台座も作らせている。よっぽどお気に入りだったのですねぇ。
よいものを見せていただき、心豊かな気持ちになる。乾隆帝のお気持ちも、少なからず理解できた(笑)