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庖丁調整士、廣瀬康二さんに学ぶセミナー@ギャラリーYDS。予め廣瀬さんにお預けして歪みなどが調整された包丁を実際に研ぐ、という実践的なもの。私は結婚のお祝いに友だちのお母様にいただいた、この三月で23年の使用歴となる、菜切り包丁(安来、青紙鋼/八角の持ち手は、けやきに水牛の角)。手入れの悪さが露呈して恥ずかしい限りだが、これを機にちゃんと研げる人になろうとセミナーを申し込んだ。
調整をしていただいてわかった衝撃の事実。和包丁は中子と呼ばれる部分が木の柄に差し込まれた構造をしているが、私の包丁は曲って差し込まれていたとのこと。ときどきそう言うものがあるというお話しでしたが、日本橋の名のあるお店のものなのになぁとちょっとショックを受ける。それにしても、一目見てそこまで見極めてしまう「庖丁調整士」、おそるべし!
まずはレジメを見ながら廣瀬さんのお話を伺い、次にデモンストレーションで動きを実際に確認後、それぞれ受講者がマイ包丁で順に実践。聞くだけ見るだけでは、そのときは分かったように思っても、いざ自分でやる段になると「あれ!?」となってしまうので、レクチャー+実践はとても有り難い。以下、覚え書き。
【日々の「守り」(もり)】(「守り」とは愛情を持って手入れをすること)
●水分と汚れを取るために使っている最中も布巾などで拭きながら使う
(そう言えばプロの方はこの仕草をよくしていますよね)
●その日に使い終った包丁はクレンザー等で汚れを磨き落とす。このとき柄もよく磨く。(柄の部分から食中毒なりやすいそうだ)洗い流して乾いたタオルでよく拭き、乾かす。(収納場所はシンクの下は湿気があるのでよろしくない)
●毎月一回中砥石(800?1000)で軽く研ぐ(日々ちゃんと「守り」をしていればこの程度の研ぎで十分だそうだ)
●1?3年に一度信用のおける専門店でメンテナンス
【研ぎ方】
●砥石は使用前に20分水に浸ける。砥石で研ぐのではなく出てくる泥(砥石の粉と鋼の粉が混じった水)で研ぐ。ゆえにこの泥を洗い流さないように。砥石が乾いてきば場合にのみ水を少しかける
●必ず表裏同数で(ただし慣れるまでは裏側を+2回)
●刃を三分割(長いものはもっと細かく)して研ぐ
●表を研ぐとき、包丁と砥石が交わる角度は、包丁から手・腕が一直線になる角度、25度から30度
●裏を研ぐとき、70度から80度
●必ず押し研ぎ(押すときに力を入れ、押して終る)グリップは小指に力を入れる。そうすることにより手先ではなく肘で研げる
●刃の角度
・両刃:表裏共に15度(ステンレスは30度)
・片刃:表、刃の角度に合わせる 裏、平らに押し付ける
●カエリ(刃先のまくれ)が出ないのは研げてない。カエリが出たら
・片刃: 表はカエリが出るまで延々研ぐ。裏は必ず10回(以上でも以下でもない)
・両刃:両面同じ回数(三箇所×5回 このとき砥石に水をかけながら。だいたい3セットでカエリが取れる。取れなければ回数を増やす/仕上砥石の場合は水をかける必要はない)*ステンレスは仕上砥石をかけてはいけない
その他、包丁を使う前はまな板と包丁の柄も濡らす。特に「包丁の柄を濡らす」というのは目からウロコ。そうすることによって和包丁の中子がぎゅっと収まる構造になっている。ここでも、力づくではなくて「その性質」を生かした造りになっているんだなぁ。和の世界は本当に素敵だ、と感心しきり。あと、使いやすい包丁というのは適当な「重さ」があって「バランス」がよいもの(グリップにバランスの軸がくるもの)。軽い包丁はかえって使いにくいのだそうだ。確かに!
ぼろぼろと目からウロコ、目からハム(イタリアではこう言う)な一日。無くてはならない日々使う道具なのに知らないことも多かった。本日覚えたことを忘れず活かして愛情を持って使っていこう。美味しい料理も切れ味バツグンの包丁があってこそ!