サンペーリ(Samperi)にあるカンティーナ、Marco de Bartoliへ。今年のお正月にカッチャトーリで勧められてこちらのMetodo Classico Cuvée Riserva VS De Bartoliを飲んだ。飲んでびっくり!こんないいワインを造るカンティーナを今までノーマークだったなんて、なんて迂闊だったんだと叫んでいたら、その後3月に現当主のレナートさんに京都でお会いする機会を得た。そして今年のイタリア旅行の行き先が7度目4回目のシチリアになり、カンティーナ訪問と相成った。
このカンティーナは70年代にマルコさんが始めた。マルコさんは2011年に66歳で死去。カンティーナは三人のお子さんたちが受け継いでいる。誰でも予約をすれば訪れることができる。約束した時間は午後3時半。マルサーラ市内から12キロ、車で約20分とのこと。タクシーで向かう。
ブドウの木は背が低い。石灰岩質の土壌で水を求めて地中深くに根を張るから上に高くは育たない。ブドウの他にオリーブとパスタ用の小麦を少し栽培している。
中に入る。古くて美しい道具が並んでいる。マルコさんはクラシックカーのレーサーだったとか。古くて美しいものがお好きだったのですね。
栗の木の樽はオーク樽よりたくさん呼吸ができる。樽が寝ている場所には自然の風が入ってきて、その時々の気候で樽の中のワインは自然に膨らんだりしぼんだりする(私の理解が間違いでなければこんな風におっしゃっていた)。ブドウの栽培も、醸造も、昔ながらのやり方をしているだけ。そう説明してくれたのはマリレーナさん。
現在「マルサラ酒」と呼ばれているのは酒精強化(アルコールとモストの添加)されているワイン。シェリーやポート、マデイラ酒と同じ。元々マルサーラで作られていたお酒は酒精強化は行わずにソレラシステムで酸化的熟成をさせていた、vino stravecchioと呼ばれる長熟ワイン。それがなぜ酒精強化されるようになったかと言うと、イギリス人が、それまで購入していたマデイラ酒が国同士の問題で入手困難になり、それに代わるマデイラ酒と同じようなワインを探していてマルサーラに出会い、これだ!と思ったから、だそうだ。そして酒精強化される前の、オリジナルのマルサーラワインを復活させようと強い意思を持ち、ヴェッキオ・サンペーリ(Vecchio Samperi)を世に出したのが、マルコさんだったのである。マルコさんは大手マルサラ酒メーカーのお出。何もかも蹴って、ご自分の道を歩かれたとこれは日本でお聞きしたお話。
1903年という古いワインの香りもかがせていただき、残念ながら飲ませてはいただけませんでしたけど(笑)最後にいくつか試飲をして、おおよそ90分のツアー。実際に五感で「知る」「学ぶ」というのは贅沢で楽しいことだ。別れ際、この後パンテッレリーアに行く私たちはレナートさんにお勧めのリストランテを教えていただいた。パンテッレリーアのブックラムという場所にこちらのブドウ畑があってレナートさんの弟、セバスティアーノさんが管理している。
迎えに来てくれたタクシーのロッコさんにも感謝。ちゃんとご自分でもレナートさんたちに終了時間を確認してくれて、きちんとその時間に来てくれた。シチリア西部、みんないい人だっ!