白隠フォーラム in 東京 (2015.01.25 Sun.)

佐藤先生サイン

2015年1月24日(土)新宿の紀伊国屋ホールにて開催。芳澤勝弘先生(花園大学 国際禅学研究所教授)のご講演はもとより、今回楽しみにしていたのは宇宙物理学の佐藤勝彦先生(自然科学研究機構機構長・東京大学名誉教授)のお話。

佐藤先生のお話は、佐々木閑先生(花園大学文学部仏教学科教授)とのトークショーという形式で、佐藤先生のお話の合間合間に佐々木先生がご質問やフォローをしてくださった。佐藤先生は、難しいお話を優しい声のトーンで、しかも易しくお話になる。それに加えて佐々木先生のフォローも的確で、物理音痴、科学音痴の私にも大いに楽しめる内容だった。

以下覚え書き(芳澤先生の資料より抜粋)個人的補足あり:

「万方帰一」と白隠 芳澤勝弘
 ●宇宙 
  ・雲門文偃(うんもんぶんえん/864〜949)禅師「乾坤の内、宇宙の間、中に一宝有り、形山(ぎょうざん)に秘在す。」
   僧肇(そうじょう/384〜414)の『宝蔵論』「広照空有品第一」からの引用
  ・『祖庭事苑』宇宙、「天地の四方を宇と曰う。古往今来を、宙と曰う。」
 ●白隠の圓相は少ないがその内の一点 十方無虚空、大地無寸土(十方、虚空無く、大地、寸土無し)「八重葎(やえむぐら)」
 ●圜悟克勤(えんごこくごん/1063〜1135)『碧巌録』四十五則「趙州万法帰一(じょうしゅうまんぼうきいち」の公案、
  白隠は『荊叢毒蘂(けんそうどくずい』の中でこの公案について述べている。
 ●メビウスの環
 ●三人の童子 白隠禅画における童子は衆生の象徴。
 ●四弘誓願文
 1.衆生無辺誓願度 しゅじょうむへんせいがんど   たくさんの人が幸せになれるように勤める
 2.煩悩無尽誓願断 ぼんのうむじんせいがんだん   尽きる事のない煩悩を無くす
 3.法門無量誓願学 ほうもんむりょうせいがんがく  壮大なお釈迦様の教えをすべて学ぶ
 4.仏道無上誓願成 ぶつどうむじょうせいがんじょう 最上の悟りを得て仏様と同レベルに達する
 
 これを白隠は以下の様に説いている:

 『八重葎』巻の三
 若し人、無上の仏道を成就せんと欲せば
 先ずすべからく無尽の煩悩を截断すべし
 煩悩を截断せんと欲せば、先ずすべからく誓って常に無辺の衆生を利済すべし  
 衆生を利済せんと欲せば、先ずすべからく常に勤めて大法施を行ずべし。若し人、法施を行ぜんと欲せば、先ずすべからく三経五論、普く内典外典に入り、伝記百家の書を捜索して、広く大法財を聚むべし。是の故に法門無量誓願学と言う。
  さらに言う、
 若し人誓願成を得んと欲せば、先ずすべからく誓願度を行ずべし。誓願度を行ぜんと欲せば、誓願学を勤むべし。その中、覚えず誓願断に至る。
 
 つまり下記の順序

 3.法門無量誓願学 ほうもんむりょうせいがんがく  
 1.衆生無辺誓願度 しゅじょうむへんせいがんど    
 2.煩悩無尽誓願断 ぼんのうむじんせいがんだん   
 4.仏道無上誓願成 ぶつどうむじょうせいがんじょう 

 なるほど、これなら出来るかも!
 
●「仏説箭喩経(ぶっせつせんゆきょう)」(毒矢のたとえ)
 (前略)涅槃に至るためには無益な質問であり、捨て置いて答えないということを持って答えとした。

●上求菩提と下化衆生(じょうくぼだいとげけしゅじょう)
 禅は己事究明
 「自分は何者か」→「自分は何をすべきか」
 『荊叢毒蘂(けんそうどくずい』(原漢文)
 “虚空もなければ大地もない。ただ清浄円明なる大円鏡の光が輝きわたっている。何にたとえようもない。そのような境地を、第九清浄職という。しかし、そういう境界が悟りだと思って、それを後生大事に死守しているならば、それは気をつけねばならぬ落とし穴である。そのようなところに安住し、腰を落ち着けずに、さらに四弘誓願を永遠に実践して、一切の衆生の利益してゆく者を、大乗円頓の菩薩という。これこそが真の仏弟子というものである。”

以下トークショーメモ及び後日補足、「宇宙はこうして誕生した」(佐藤勝彦編著/ウエッジ選書)参照:

佐藤勝彦・佐々木閑トークショー

・宇宙には始まりがあったか
 聖書の創世記、古事記などで語られてきた。ヒンズーのシヴァ神はブラフマー・ヴィシュヌ・シヴァの三神一体=トリムールイ。右手に持った小太鼓で宇宙の創世を奏で、もう二本の手で宇宙を維持し、さらに火炎を持ったもう一本の手で宇宙を破壊する。
・天の川銀河は2,000億個の星の集まり。一番近いアンドロメダ銀河は230万光年離れている。宇宙は1,000億個の星の集まりである銀河で成り立っている
・「ビッグバン理論」ジョージ・ガモフ、マイクロ波が発見され理論が立証
 アインシュタインの相対性理論、ハッブルの膨張宇宙の発見、ガモフの予言したマイクロ波の発見=ビッグバン理論の確立。宇宙のスタンダードモデル
・「無からの宇宙創世」アレキサンダー・ビレンケン
・「インフレーション理論」1981年に佐藤先生が「指数関数的膨張モデル」(「真空の相転移」=「宇宙の創世」から「ビッグバンに至るまでの一瞬の異常膨張のシナリオ)を提唱、半年後アラン・グースによって同様のシナリオが「インフレーション理論」として発表され、その後、この名称が一般的になる
・宇宙は「無」=「真空」(真空のエネルギー、真空は空っぽではなくて“ゆらぎ”が存在)から生まれた。真空の状態はエネルギーの高い状態。空間は互いに押し合い急膨張、そしビッグバンに繋がる
・「真空の相転移」南部陽一郎
・宇宙の多重発生「マルチバース multiverse」
・ニールス・ボーア@コペンハーゲン 量子論の生みの親
・遠くを観測すれば過去が見える
・宇宙を構成している物質・エネルギーの96%は正体不明、暗黒物質・暗黒エネルギー
・「我ら何処より来るや 我ら何者なるや 我ら何処へ去らんとするや」 ポール・ゴーギャン