2004/10/4(月 lunedi)晴・くもり・晴 ■くんくん!ここは匂う!!■
少し休んでからまずは散歩。のどかな田園風景の中をのんびり歩く。時折葡萄畑で働く人を見るが、行き交う人もなくなんとも静かで牧歌的。葡萄の葉っぱが色づき始め美しい。晴れているけれどどことなくもやがかかった感じは中部から北部にかけてのイタリアらしい光景。今夜の白トリュフのために新鮮な空気を吸いながらとにかく歩く、歩く。
午後8時、待望の夕食。着物に着替えてリストランテ部分へ。ここでも着物は評判よし。うれし。しかしKIMONOという言葉はとてもポピュラーですね。皆知っている。大奮発して白トリュフ Tartufo bianco d'Albaづくしコース。その名も"Omaggio al Tartufo"、お値段は恐くて書けません(笑)まずはフランチャコルタ Franciacortaのスプマンテで乾杯。次のワインはシニョーラが選んでくれたBarolo Monvigliero '96 F.lli Alessandriaという小さなカンティーナのもの。この年はottimo(最良)で3bicchieriとの説明だったと思うけれど、戻ってから確認のため調べたら'00のヴィンテージが3bicchieriとしか確認できなかった。とにかく€40で厚みとタンニンのバランスもよく美味しいバローロだった。メニューにはアンティパスト・プリモ・セコンドとなっている。食べる気満々だったのでこの時点では何の心配もなかった。まず最初に「お楽しみの一品」が運ばれてくる。鶉の卵と白トリュフを使ったもの。美味しい〜っ!次も感激しながら完食。どのお皿にもシニョーラが惜しげもなく白トリュフをかけてくれる。その度に魅惑的な香りが広がる。今年のトリュフは昨年より質が良いけれど小振りだそうだ。セコンドはラヴィオリ。なんとどでかい一枚のラヴィオリがやってきた。中に卵が入っているのでまず四等分して、とSignora。美味しい。美味しいけれど、いよいよお腹がいっぱいになってきた。正直に言うと、どれも本当に美味しいけれど少し味のヴェクトルが似ている。そしてみな白トリュフ味。そう言えば以前「松茸づくし」を食べたときにも完食できなかったな。ちらと不安がよぎる。このままではセコンドが入らない。申し訳ないけれどラヴィオリを残す。給仕の女性が「何かお料理に問題がありますか?お口に合わなければ他のものをお作りします」だって!違うんです違うんです、ただ単にお腹がいっぱいで、お料理は本当に美味しいのですが、と説明にやっきなわたし。そしていよいよセコンドが登場。私はメニューにあった牛フィレをわざわざ鳩 Piccioneに替えてもらった。しか〜し、この時点で正直なところ倒れそう。でもわざわざ替えてもらった食材だしなんとか食べようと口に運ぶ。おいしい。おいしいよ。食べた〜い。でも駄目だ。二口食べたところでいよいよギブアップ。上にかかっていた白トリュフだけ意地汚く全部平らげて後は残す。ごめんなさ〜いっ、ハトさん。そしてシェフ。連れもさすがに半分程しか食べられない。だってとってもビッグなフィレなのだ。そうしたらシニョーラがラヴィオリを残していたし見た目もスリムであまり食が太くなさそうだから、いつもより少なくしたよの、って。えっ!!ハトはともかくフィレはこれで少ないの!?ニッポンだったらこんなものですとジェスチャーを加えながら説明。しかし大和撫子の意地を見せられず凹む。その後はカッフェしか入らなかった。しかし連れは果敢にドルチェに挑戦。さっぱりとジェラートを頼むとその前にシェフからのドルチェが、しかも2品。ひぇ〜っ。それを前に言ってくれ。かっちょ悪くも連れが頼んだドルチェをキャンセルすることに。またもごめんなさい、シェフ!けれどお酒は一滴たりとも残さないのでした。お腹いっぱいで倒れるようにしてベッドに。あぁ、ロカンダでよかった。そうそう、あまりのことに途中でお部屋でひと休み。その間にシェフがテーブルに来たらしく心配させてしまいました。うぅ、ごめんなさい。
こうして一日目の夕食は美味なるものを前に涙目で情けなくも敗北したのだった。
*ロカンダ Locanda:レストラン兼ホテル
2004/10/5(火 martedi)晴 ■アルバの町を歩く■
朝ご飯は手作りのパン・ジャム・ヨーグルト・タルトが並ぶ。果物もすべて庭で採れたもの。そしてプロシュートにモルタンデラ(モルタデッラではなく)、サラミにチーズ。プロシュートはProscuto di Sourisと言ってFuriuri Venezia Giuliaの小さな町サウリスのもの。モルタンデラ MortandelaはTrentino Alto Adigeの特産品。どちらも今回持参のガイドブックCibovagandoに載っている。実はこのロカンダもこの本で知った。シニョーラに見せると著者のDavide Paolini氏はアルバ辺りにもよく出没して飲んだり食べたりしているそうだ。どれも美味しくてついつい食べ過ぎる。朝ご飯には強いです!(笑)
食休みをしてアルバの町を目指す。健脚商売の私たちには5キロは軽い距離。なだらかに続く葡萄畑。道端に咲いている小さな花。写真を撮りながら楽しく歩く。一時間半程で町に到着。アルバの町は以前一度訪ねたことがある。そのときはアスティからの日帰りだった。トリュフの季節には少し早くて店先にもあまり並んでいなかった。今回はシーズン真っ只中。大好きなポルチーニと共にたくさんのトリュフが並んでいる。キノコを目で楽しんだ後は軽くお昼。宿のシニョーラに教えてもらったワインバーVincafeへ。スプマンテ、赤ワインNebbiolo d'Alba、蒸し野菜、サラミの盛り合わせ(猪 cinghiale・ガチョウ oca*)。グラスで気軽に色々飲めるし料理も美味しい。おつまみからかなりちゃんと食事まで。使いかっての良いお店。そのせいかいつ通っても混んでいた。バルバレスコ村のサラミ、アルバのトリュフ入り、relangheのピエモンテ産ヘーゼルナッツ入りトローネを買う。夕食用の食材も買って宿へ戻る。さすがに帰路はタクシー。昨日と同じ人だった。Fiera nazionale del tartufo bianco d'Albaへはスケジュールが合わず入場できず。残念なり!
*Salame d'oca:ガチョウのサラミは豚肉を口にすることが出来ないユダヤ人たちの間で15世紀頃誕生。ロンバルディア LOMBARDIA・モルターラ Mortara周辺の特産品。
2004/10/6(水 mercoledi)晴 ■ブラへそしてリベンジの夜■
満ち足りた気持ちでブラの街を散策。とある古い建物の中を覗いていたらそこで働いていると思われる男性が「中へどうぞ」と声をかけてくださる。どうやら市役所のオフィス?お言葉に甘えて中に入ると、鍵のかかっている左右の部屋を見せてくれるために、わざわざ守衛さんを呼んでくれた。その親切も何ともさりげない。う〜ん、感激。部屋は今は使われていないようで散らかっていた。それはご愛嬌(笑)でも元は素敵な設えだったことがうかがえた。ブラの街並み、落ち着いていて暮らしやすそうだった。
アルバの駅に戻る。いつもと同じタクシーがいるかと思ったらいなかった。仕方なくタクシー乗り場で待っているとおじさんが「タクシーを待っているのかい?」と近寄ってきた。そうだと答えると、どこまでと聞いてくる。どうやらこのおじさんもタクシーらしい。宿の名前を告げると女性と何やら話しはじめた。相乗りかと思ったら奥さんで、なんとこの奥さんが運転。えっ、そう言うのいいの?しかも奥さんは昨夜はほとんど寝てないのよ、と不満そうにダンナに話している。ふ、ふあん。大丈夫なのか。とにかく乗り込んで車は走り出した。あれっ、いつもと違う方向。やっぱり大丈夫じゃないかも。仕方なく奥さんに支持を出す。旅行者、しかも外国人に道を教えられるって.... とにかく無事についてお金を払おうとすると「幾らかわからない」だって(爆笑)いつもこれだけ払っているからと€13渡す。ふふふ、日記ネタをありがとう!>シニョーラ
夕食はロカンダでリベンジ(笑)今日は一昨日の失敗を繰り返しませんよ。作戦会議を開いているとそこへシニョーラ参戦。アドヴァイスをいただきながらアラカルトで慎重にお料理を選ぶ。アンティパスト+プリモで行く事に決定。ワインは今日もお料理に合わせて選んでもらう。Fontanabianca '98 Barbaresco 。シニョーラは今夜こそはうちのドルチェを食べてねと言う。えぇ、今日は行きますよ、ドルチェまで。そして完食だっ。アンティパストはパブリカと“きくいも(イタリア語名を失念、ゴボウのような味と食感)”のミルフィーユ仕立ヴァーニャガウダソース、ひよこ豆のクリーム状スープ。フィスタチオやオレンジピールが入っている。真ん中には白身魚の切り身。どちらも美味しい。シェフの想像力が生かされているお料理。プリモはバローロのリゾット。なんとお米は一年もの。それって日本では古米ですが!(笑)ここでは何もかも寝かされたものの方に価値があるらしい。上にテールが少し。う〜ん、おいしい。しかし悲しいかなかなりセーブしたつもりだけれどここでお腹がいっぱいになる。ドルチェには行けそうにない。あっ、だって今日もアミューズグールがあったんです。ズッキーニの花のフリット・ヒヨコ豆のクリーム添え。それも大きいの。さらに初日には書き忘れたけれど、アミューズグールの他にもおつまみが出るのだった。せめてシェフからのドルチェはいただきます。えぇ、いただきますとも!しかし半分しか食べられなかった。シニョーラが笑いながら「えぇ〜、またドルチェ食べないのぉ」と近寄って来た。わ〜ん、いじめないでください。その他は全部食べましたよっ、と懸命に答えるわたし。もしかして遊ばれてる?その代わりデザートワインをいただきました。となりのカンティーナで作られたもの。そうこのロカンダのお隣はカンティーナ。お酒はなぜか入るのね。その後カッフェを頼んだら初日同様、プチフールが出た。どれも美味しそうだけれど食べられない。し、しかも、チョコレートも別に、出たぁ〜。恐るべし。今夜も涙目になってしまった私です。でもでもとても美味しくてシニョーラとの会話も楽しくリストランテの雰囲気も温かく心に残るアルバ最後の夜。そしてワインは雑味がどこにもなくきれいな味。旅をしていないものはこんなに美味しいのかと、いつも思う事ですが、今回は特にそれを感じながら、お腹も心も満ち足りて眠りにつく。
そろそろ魚系が恋しくなってきた。明日はリグーリアはアルベンガ Abengaへ。+つづく+